手術について
白内障手術について
どのように手術をするか
水晶体嚢という袋の中の濁りを超音波で砕いて取り除いてしまう、もしくはそのまま取り出してしまいます。残った袋(嚢)に眼内レンズを挿入する手術です。手術は局所麻酔で行います。
術後のケア
手術翌日はさすがに眼に傷を入れただけあって、充血したり、眼がゴロゴロしたりします。ただし傷口はまぶたの下なので、患者さんが自分で確認することはできません(興味津々ですが、絶対にまぶたをはぐって確認しようとしたりはしないでください!)。これらの症状は術後数日から1~2週間で治ってきます。結膜を縫合している糸がゴロゴロのおもな原因です。当院では吸収糸を使用しておりますので溶けて吸収されてしまいます。抜糸はしなくて良いのです。ご安心下さい。
手術後3ヶ月くらいは手術による炎症を抑え、感染症を防ぐために点眼薬を処方します。必ず指示通りに点眼して下さい。
仕事への復帰は、患者さんの仕事の内容や時間にもよります。
主治医に相談して下さい。眼内レンズは単焦点レンズです。ピントを合わせる調節力がありません。また、術後乱視も発生しますので術後は眼鏡が必要です。眼鏡は術後3ヶ月目くらいをめどに作製します。そのころに患者さんの視力に合った眼鏡処方箋を発行します。それ以前に眼鏡装用を希望される方は主治医にご相談下さい。
入院期間について
片目で3泊4日程度の入院をお勧めしていますが、患者さんの年齢や当院からの距離、術後の通院が可能か、さらには手術の難易度によっても異なります。
- おおむね70歳以下であること
- 手術翌日より毎日きちんと通院できる方
- 重篤な合併症がない方
- 手術当日の送り迎えを含め、通院に家族が付き添える方
- 術後自宅で清潔の管理ができ、安静が保てる方
- 自宅において家族と同居しており、家族の理解が得られる方
- その他担当医師との術前の診察で、日帰り手術が可能と考えられる方
などです。これ以外にもいろいろと準備しなければならないことや説明しなければいけないことがあります。詳しくは担当医とご相談下さい。
白内障手術についての当院の考え方
当院で行う白内障手術に対する考え方を説明させて頂きます。
当院では手術はスピードを追わず、ゆっくりと患者さんの状態を把握しながら丁寧に行います。よく「当院は白内障手術を○○分で行います」といった文面を見ることがありますが、そのような考え方とは一線を画しております。手術時間の短さを競う、あるいは手術時間を短縮することが未だに一部の眼科医の間でもてはやされていますが、当院はこのような考え方とは違ったスタンスをとっております。
当院ではほとんどの症例は強角膜切開にて行っています。この術式は、いったん結膜を処理する手順をふむため少し時間が余計にかかります。そのため角膜切開という結膜の処理を省いた術式を好む術者もいます。しかしながら、角膜切開を行うと手術時間も短くなり、手間も省けて楽ですが、その反面角膜切開のほうが術後早期から長期にわたって傷口の強度が弱いことや、角膜切開の場合には外からのばい菌に対して防御機能の弱い涙液しか無く、感染防御に弱いことが上げられます。
また、最近角膜切開のほうが強角膜切開より術後眼内炎が多いという報告が相次いでいますが、これもこういった理由によるものです。
そこで当院では、時間はかかるものの(といっても5から10分程度手術時間が延長する程度ですが)きちんとした強角膜切開を行い、手術終了時にきちんと結膜を元の位置に戻したうえで縫合し、傷口を完全に覆う術式をとっています。これにより創傷治癒が早く良好で、治癒後の強度も高くなります。結膜は眼表面で最も優秀な感染防御組織であり、創傷治癒もきわめて早く、この利点を活用しない手はありません。切開創を結膜で確実に覆うことは感染防御の観点からも、強膜の創傷治癒の観点からも非常に重要です。
(しかしながら、これは角膜切開を全否定しているわけではなく、角膜切開についても利点はあります。たとえばワーファリンなど血液を固まりにくくする薬を服用中の患者さんにとっては出血が少なくなる、緑内障手術を以前に受けた患者さんはその傷口に影響を及ぼさないなどの利点はあります。)
さらに白内障手術に用いる開瞼器はすべて吸引機能付き開瞼器を用い、術野にたまった細菌等を即座に除去する工夫もしております。
当院は、安全な手術を第一とし、患者さんにとって一番よい術式で手術を行うようにしています。
緑内障手術について
眼圧が上昇するために視野欠損や視力障害を来すのが緑内障です。いったんダメージを受けた視神経は回復しません。したがって視野が欠損すると、その欠損した視野を元に戻すことはできません。なによりもまず眼圧を下げるために点眼薬や内服薬で治療をしますが、それでも進行を阻止できない場合には手術を行います。緑内障手術は眼圧を下げることを目的として行うのであり、視野を回復するためのものではありません。早期発見が大切な病気の一つです。
どのように手術をするか
緑内障の種類によって異なります。房水という目の中の水の流れをよくするための手術を行います。水の流れの抵抗の大きい場所(線維柱帯といいます)を切り開く術式(線維柱帯切開術)と、その部位を取り除いてしまうことで目の外に房水を逃がすバイパス手術を作製する術式(線維柱帯切除術)とがあります。このほかにもいろいろあります。手術は局所麻酔で行います。
入院期間について
術式によってさまざまですが、3~10日程度です。
網膜剥離手術について
網膜剥離は網膜がはがれているために視力低下や視野欠損をきたす病気です。いったんはがれた網膜は手術によりもとに戻しても視力が回復しない場合がほとんどです。したがって、早期発見が大切な病気の一つです。
どのように手術をするか
手術の術式は大きく分けて、目の外から治す方法と、目の中から治す方法の2種類があります。
目の外から治す方法は強膜バックリング手術といいます。網膜の穴のあいた部分を眼の外側から冷凍させることで炎症を起こし、さらにそこにシリコンのスポンジを外側から縫いつけることで裂孔部位を圧迫して治療をします。場合によっては治療の効果を高めるため眼内に空気を入れることがあります。また、網膜剥離の丈が高い場合には、眼の外から剥離した網膜の下の水を抜く作業を行うことがあります。
網膜剥離手術目の中から治す方法は硝子体手術といいます。目に3カ所小さな穴を開け、その穴から器械を入れて中の硝子体というゲル状の物質を取り去り、空気をいれて強制的に網膜をくっつける治療をします。この時にレーザーや冷凍凝固を用いることがあります。多くの場合、シリコン製のベルトを眼球に巻き付けて治療効果の拡大をはかります。
入院期間について
術式や術前の網膜剥離の状態にもよりますが、1回の手術で7~14日ぐらいです。
レーザー網膜光凝固術について
さまざまな網膜疾患に対しレーザー網膜光凝固術が行われます。たとえば糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症、網膜裂孔などです。
どのように手術をするか
レーザー網膜光凝固術用の装置を用いて行います。外来にある検査用の器械に顔をのせる要領で、患者さんの顔をレーザー網膜光凝固術用装置に固定し、治療する側の目に医療用コンタクトレンズをのせ、レーザーを照射します。
網膜裂孔が目の周辺部にある場合や散瞳(瞳を開くこと)が十分に得られない場合、さらには患者さんが車いすから降りられない、顎台にあごがのせられないなどの場合には、この器械では完全に治療できない場合があります。その場合は患者さんにベッドの上で仰向けの姿勢になっていただき、双眼倒像鏡という器械に取り付けたレーザー網膜光凝固術用装置を用いて治療をします。
入院期間について
基本的には外来にて行います。患者さんの体調や場合によっては入院にて行うこともあります。